桃始笑
七十二候が啓蟄の次候に変わり、桃のつぼみがほころび、花が咲き始める頃となりました。
昔は花が咲くことを「笑う」と表現しました。
「山笑う」とは春の季語で、芽吹き始めた華やかな山の形容です。
桃の花は、梅と桜の間を縫うようにして咲き出します。
梅は咲いたが、桜にはまだ少し早い3月の中頃、桃のつぼみはほころび始め、旧暦のひな祭りにあたる4月上旬頃、ちょうど満開を迎えます。
春に先がけて咲く梅、闌 (たけなわ) の春に開く桃、過ぎゆく春とともに散る桜。
どれも同じくバラ科に属する木の花ですが、それぞれに異なった味わいを持っています。
弥生時代の頃には既に日本に伝わっていた桃ですが、古来中国では邪気を祓う神聖な木として信じられてきました。
イザナギノミコトが黄泉の国のイザナミノミコトを訪ねてヨモツシコメに襲われた時、桃の実を投げて追い払ったのも、この思想が日本へ伝わってきたためとされています。