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巧遅拙速

中国の兵法書『孫子』には、「拙速(せっそく)は巧遅(こうち)に勝る」という格言があります。拙速とは、つたなくても速いことであり、巧遅とはたくみでも遅いことです。つまり、完璧でなくとも取組が早いにこしたことはないという意味です。仕事で考えてみると、私自身、巧遅でうまくいったことはほとんどありません。 

 完璧さを追求するあまり、いつも期限がぎりぎりになる人がいます。完璧さを心掛けること自体は、とても素晴らしい考え方です。ただし、時間がかかりすぎてタイミングを逃しては意味がありません。「完璧だ」と自分が思っていても、相手が同じように「完璧だ」と感じるとは限りません。時間の経過とともに相手方の考えが変化することもあります。そうしたリスクを回避するには、スピードが大切です。

 古来から歴史は人生の鏡であると言われてきました。古今東西を問わず歴史上の偉人は、皆早くて上手な「巧速(こうそく)」です。しかし、彼らは最初から「巧速」だったわけではありません。「巧遅よりも拙速」ということを意識し、その結果として「巧速」の術を身につけたのでしょう。

 「拙速」か「巧遅」かと二者択一の判断を迫られたら、あなたならどちらを選択しますか。拙速といっても限度もあります。いくらスピードが早いといっても、あまりにも粗雑すぎたり、内容がずさんすぎると、当然ながら信頼を失います。何事も計画性が大切です。