山花開似錦 潤水湛如藍
山花開いて錦に似たり
澗水湛えて藍の如し
中国宋代の禅僧、大龍智洪禅師に、修行僧が問うた。
「形あるものは必ず滅びます。永遠に変わらぬ真理はあるのでしょうか」
すると禅師は上の句のように答えたという。
自然の風光をあらわす、美しい詩句だが、禅的な意味はもっと深い。
春が来て山に咲いた花は錦のように美しい。
しかし、時間が経てばその花も散ってしまう。
藍のように碧くたたえた澗(たに)の水も、ゆっくりとだが動いている。
あっという間に散る花と、動いていないようで動いている澗の水。
スピ-ドに差はあれど、どちらも変化し続けていることに違いはない。
その「変化」こそが堅個法身、永遠に変わらぬ真理だと大龍禅師は説いたのだ。
花は散るからこそ美しい。
あっという間に散ってしまう存在でありながら、無心に精一杯咲く。
人はそこに真実を感じ取り、花を愛でる。
人もまた同じ。
無心に精一杯生ききるからこそ
人生は錦の如く美しくなる。