不動心
武道の世界では「不動心」という言葉がスローガンのようによく掲げられている。
不動の心。
何があっても動じない精神力、常に冷静さを失わない心。
そんな意味をこの不動心という言葉からは連想してしまいそうだが、禅で考える不動心はちょっと違う。
じつは、禅語のなかにも不動心と似た言葉で「八風吹けども動ぜず」という言葉がある。
「八つの風」とは、人の心を揺さぶりやすい次の8つの事柄のこと。
- 利益
- 衰退
- 陰口
- 名誉
- 賞賛
- 悪口
- 苦
- 楽
利益になる話を聞けば興奮し、衰退する舟には乗りたくないと思い、褒められたら嬉しくて舞い上がり、悪口を言われたら不安や怒りの気持ちが湧いてくる。
そんなふうに、他人の言葉によって人間の心というのはいつも揺さぶられてしまう性分をそなえている。
そのような外からの声を風に見立て、どんな風が吹いても動じない心を尊ぼうと、この「八風吹けども動ぜず」という禅語は言っているというわけだ。